小川未明童話集「野ばら」(完)
冬は、やはりその国にもあったのです。
寒くなると老人は、南の方を恋しがりました。
その方には、せがれや、孫が住んでいました。
「早く、暇をもっらて帰りたいものだ」
と、老人はいいました。
「あなたがお帰りになれば、知らぬ人がかわりにくるでしょう。
やはりしんせつな、やさしい人ならいいが、
敵、味方というような考えをもった人だと困ります。
どうか、もうしばらくいてください。そのうちには、春がきます」
と、青年はいいました。
「小川未明童話集」(新潮文庫)小川未明著
音楽は秋山裕和さんよりお借りしています
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